前回の記事で、書店やネットで手に入る情報はあまり信用できない、と書きました。
でもそれならば、どうやって勉強すればいいのか。
根拠は何か、疑いながら情報を読む
身近に投資の達人がいて教えてもらえる、という人はあまりいないでしょう。だとすれば、やはり書店の本が中心となるでしょう。
ですが、巷にあふれる投資関係の本の中で、一般人の初心者にとって本当にためになる本というのは、少ないような気がしています(全然合理的ではないですね)。
ですから、基本的スタンスとして本に書いてあることに、根拠があるのか疑ってかかることをお勧めします。
サラリーマンが投資を始めるときに忘れてはならないこと〜その2〜 「投資本は、冷静に、批判的に、考えながら読むこと」
チャートの形を見て、株価の予想が出来る?
例えば、投資法の中にテクニカル分析(チャート分析ともいいます)というものがあります。これは簡単に言うと、ある会社の株価の動き(チャート)を見て、そこに法則性を見いだして売買する、という手法です。
テクニカル分析について書かれた本の内容は、基本的にどの本も同じです。
まず、チャートがどのような形になれば買いで、どのような形になれば売りなのかを、様々なケースを紹介します。
その根拠として、過去に同じようなチャートの形が現れて、このように売り買いしたのでこれだけ利益が出ました!と書いてあります。
現実の数字を元にした科学的(?)なデータを見せられ、説得力のある文章を読むと、「おお、これならばうまく行きそうだ。規則に従って売り買いすればいいのだな」と思う人もいるでしょう。
うまくいかないのは『だまし』のせい?
しかし、現実にやってみるとうまくいきません。
なぜだ!ともう一度その本を読み返してみると、こんなことが書いてあります。
「でもチャートには時々『だまし』があります。チャートがこの形になれば株価が上がるはず、と思っても逆に下がったり、下がるはず、と思っても上がったり。その『だまし』に引っかからないようにしなければなりません」
では、『だまし』と『本物』はどうやって見分ければいいのか?それは書いてありません。
あなたは「もっと詳しく書いてある本があるに違いない」「テクニカル分析について勉強が足りないのだ」「知識を増やせば、きっと『だまし』に引っかからないようになれるのだ」と考え、さらにテクニカル分析の本を探し続ける・・・
しかし、チャートの形から株価の方向性がわかる法則を見いだす、というのがテクニカル分析の前提のはずです。『だまし』と見分けがつかないものは、法則として成立していないと考えるのが合理的ではないでしょうか。
書いていないことは何か、考えよう
ちょっとステレオタイプに書いてしまいました。でも、上記の話は全くの嘘というわけではなく、実際にそのような本はあります。
注意:テクニカル分析を否定しているわけではありません。最低限のチャートの知識は必要だと考えますし、バランスの取れた良い本もたくさんあります。
そもそも、売り時買い時を見極めるチャートの形が正しいことの、根拠として示される過去のチャートは、筆者が選んだものです。何十年という期間のチャートの中には、同じようなチャートの形がたくさんあるでしょうが、それらのうちどのくらいが筆者の言うように株価が上がって(下がって)いるのでしょうか。
合理的に考えれば、同じ形のチャートが現れたときに7〜8割の株価が同じ方向に進んでいるのであれば、法則として認めて良いかも知れません。
しかし、そのような根拠を示しているテクニカル分析の本は、寡聞にして知りません。
一つか二つのチャートを見せられて、その手法が正しいことの根拠だというのは、あまりにもずさんだと思うのですがいかがでしょうか。
結局テクニカル分析は、後付けで理屈を述べている面がある、と思います。
注意:だからといってすべてを否定しているわけではありません。念のため。
わかりやすい一つの例として、テクニカル分析についてお話ししました。このように、さらっと読むと説得力のある話も、「書かれていないことは何か」「載せられなかったチャートの存在」などを考えると、少し冷静に判断が出来るのではないでしょうか。